教育、学び、そして学校 〜 83

公開: 2024年4月22日

更新: 2024年4月22日

注83. 経済発展と個人間の競争の激化

1990年代の後半から、世界的にインターネットが普及し、地球上では人々にとって、自分が住んでいる地理的な場所と、自分が経済活動を行う主たる場所(市場の存在場所)との関係は薄れました。つまり、「住む場所」と「働く場所」が隣接していなければならないと言う、これまでの人類に課せられていた制約の強さは、著しく弱まりました。このことは、個人にとっては、地域的な労働市場を限定することなく、グローバルな単一経済市場での競争になることを意味します。国内では、最も優秀な技術者、科学者であっても、世界的な視野で見れば、世界中の数多くの優秀な技術者、科学者の一人にすぎなくなります。国内に限定されていた個人間の競争は、世界規模の競争に拡大されました。

しかし、政治的には、各個人は、それぞれの住む国の住民であり、ある人種に属する個人の一人です。法律的には、ある国家の国民であることには、違いないのです。さらに、税金を考えると、労働市場が存在する国家(つまり、その人が所属する企業・組織が登記を行っている国)に所得税支払いますが、社会保険などの福祉に関する負担などは、将来住むと考えられる国家(普通は、今住んでいる国)に支払うことになるでしょう。その他の法律(民法や刑法など)は、明確には決まっていません。つまり、個々の事例別に、国家間で協議されることになるでしょう。とは言え、個人は、経済的な損得勘定に従って、どの企業に所属すべきかを決めるでしょう。つまり、長期的に最も所得が高くなる国の企業に所属する例が多いでしょう。、

そのような厳しい競争を勝ち抜くときに、最も重要になる要素として教育の成果があります。教育で得た知識の質と量は、競合する複数の候補者の中から、一定数の対象を選定するときの、客観的な基準の一つとなります。つまり、良い教育を得ている人ほど、有利になるのです。このことが、世界的な教育環境における、個人間の競争、そして国家間の競争の激化を加速させる原因となっています。国によっては、子供たちを他国の、より教育環境の整った地域で教育を受けさせるため、より良いとされている教育機関へと送り込む、裕福な家庭があることも知られています。国による経済格差が大きくなるに従って、この個人間の教育競争は激しくなるでしょう。特に、東アジアの国々では、昔から、科挙の制度があり、そのような伝統・文化があるため、その傾向は強くなっています。

参考になる資料